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2019年9月1日更新

「車いすユーザーの靴を見ると分かる日常」

~UDが進むとおしゃれも進む~

 


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車いすユーザーは靴底が減らない。代わりに車いすのタイヤがすり減り、定期的に交換する。当たり前の話だが、減らないからと言って、同じ靴ばかり履いているのも悲しい。おしゃれな人は沢山の靴を持っているのだろうが、私は10足にも満たない。

20年ほど前のこと。講演を聞きに来られた車いすユーザーの女性が私を見て、「運動靴(スポーツシューズ)ではなく革靴を履いている人に会ったのは初めてです、驚きました。」と目を丸くして話してくれた。ホンマかいな?と返すと、ホントですよ、と強く返された。逆に驚いた。その時代、地方では、療養のような生活を送っている人が多かったということなのか?革靴で驚かれたのは一度きりではない。

確かに自分を振り返り、それは少し理解できた。人生の中途で車いす生活になり、自分の身体的自立(服を着たり、お風呂に入ったりなどの日常生活が自分で出来ること)が、やっとの状態の時に、おしゃれをするには体力が必要で、気持ちに余裕がないと出来ない。UD(ユニバーサルデザイン)な外出先がなければ、出かける場所も無く、そもそもおしゃれをする気力も萎えるだろう。

UD環境が進んで、今や働く障害者も増え、革の靴を履くことなど驚かなくなった。むしろカジュアルなスポーツシューズを履いての通勤がおしゃれに見えるかもしれない。

以前、靴は海外に旅行で行く際に買うようにしています、と言った時に福祉分野の学者から、まるで、おしゃれの先端を行く障害者であるかのように思われ、喜ばれた。何のことは無い。大きすぎてサイズが無いだけだ。

車いすユーザーが靴に関心を持つという組み合わせが意外なようだ。靴の代わりに車いすでいいとでも言うのだろうか。一般的には何も驚くようなことでもない。

そういえば、昔、国際大会に行く際、支給されるユニフォームの予算が無いため、車いすの選手のみ靴(スポーツシューズ)が支給されなかったことがあった。足が地面に着かないから必要ないという意味だったのだろうか。さすがにその後、見直された。つまり、車いすユーザーにとって靴は関心を持たないもの、と思われている節があったのだ。

今や靴を含めて、当たり前におしゃれをする車いすユーザーは大勢いる。

国内で大きなサイズの靴や左右のサイズが違うものまで手に入れることができる今だが、それでも全く動かない足は、靴が簡単にぬげてしまうので、とても煩わしい。足を持ち上げるとポトンと落ちる。そのために、甲や足首にストラップが必要だ。

その後、友人から安く誂えてくれる靴やさんを紹介されて以来、そこで作ってもらっている。一緒に試行錯誤しながら作ってくれる。

数少ない靴を大事に履いている。車いすに座っていると靴の甲部分は見えるが、かかとは見えない。誰からも見えないかかとに飾りを付けて密かに楽しんでいる。身体的自立がやっとだったときには考えられなかった心の余裕だ。

 

               

                                                             

“9月のおしゃべり’も更新しました。”

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