ホーム

 

2020年6月1日更新

スローリーディングの薦め。

          Oriijin(ダイヤモンド社)春号、「こころ伝える人」に登場しています。


顔右余白

 

 以前は、よくエッセイを読んでいたが、一昨年からのマイブームは小説。

最近は桐野夏生、薬丸岳が好きで読んでいる。桐野氏の作品は、主要な女性が4人出てくることが多い。常識を逸脱した危うい生き方をする中、何とか保っていた生活や人格が壊れていく。警察に捕まるよりも、本当に怖いものは自分の心が壊れていくことだ。壊れた心は修復しようがないと自分で分かってしまうことこそ破滅だ。登場人物の深層心理や描写がしっかりしていて、凄い作家だと思う。

本を持って出れば、独り旅行も外食も全く退屈しない、それどころか至福の時間になる。

人との会話も楽しいが、相手あってのことで自分の都合で人を動かすことはできない。

たとえメンターがいたとしても、必要以上に、その人が自分に時間を割いてくれるわけではない。しかし、本はいつでも好きな時間に取り出せる。他人の考えに驚き、自分だったら、この人物のような解釈をするだろうか?と悩み、新たな選択肢を持てることもしばしばある。

「そうだ、これからは自分の常識に囚われずに生きてみよう」というヒントをもらい、柔軟な考えになり晴れ晴れする。

本は友達100人持つ以上の価値に匹敵すると思う。もっとも100人も友達を欲しいとは思っていないし、実際にも少ない。自分の損得や寂しいから持つことは本物とは言えず、欲だ。大事な友達が少しいればいい。一人でもいたら僥倖だ。物の断捨離と同じで、友人が多いと付き合いが雑になる。欲張らずに手放すことだ。

この数ヶ月、家に居る時間が増えたので、本を読む時間は潤沢だ。デジタルではなく紙の本を読んでいる。小説ではないが、お勧めは、平野啓一郎「本の読み方」。

世の中に速読を薦める本は沢山あるが、平野氏は遅読を薦めている。速読は変身願望や自己啓発といった効果を謳っていたりするので、以前から興味があったがチャレンジしたことはなかった。平野氏曰く、“速読は自分に身につく信頼が低い。また「本を何百冊読んだ!」などと自慢している人は”ラーメン屋の大食いチャレンジで、十五分間に五玉食べたなどと自慢しているのと『何も変わらない』”と痛快にわかりやすく指摘する。“量から質の読書『知読』への転換は、本の中の様々な仕掛けや意味深い一節、絶妙な表現などを見つけることができる。”と言う。

確かに私の人生の糧となっている。平野氏の文章は平易で読みやすく、説明も具体例が多くて明快だ。説得力のある話運びは、読みながら快適だ。

ずっと、「私だけが、こんなに読むのが遅いのだろう」と思っていたが、今はじっくり味わうことに喜びを感じている。

スローフード、スローライフは聞いて久しいが、スローリーディングも、今の能率やスピードを求める世界観とは違う領域の話だ。それは内面の幸福・豊かさといったもの。

スピードや結果の即効性も大事だろうが、「量より質」「速さより深さ」「外より内」を重視したスローリーディングを続けていくと、自分の心を、人生を豊かにしてくれる気がする。

 

 

 

 

                                                             

“6月のおしゃべり’も更新しました。”

➤ 前回のエッセイを読む


 


▲ ページの上に戻る