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2018年3月30日更新

「見知らぬ誰かの幸せを担う」


hyoushi4gatu 洋服とUDは一番遠いところにあるかもしれない。

 立った姿で作られたパターンは車いすや腰の曲がった高齢者、腕の曲げ伸ばしに不自由を感じている人や特定の筋肉が発達している人!等々は、そこから外れる。  それぞれの体に合う洋服を追及していけば注文服、オーダーになるからだ。

 しかし、お店に吊るしている洋服が着られたならば、とても楽しいだろうな・・・。体のどこかが窮屈でも我慢している、背中が見えていても「こんなものだろう」と諦めている車いすユーザーも多い。

30年以上前から、この分野で折に触れて勉強や意見交換をしてきた。そのきっかけは、その道での私のメンター、岩波さんとの出逢いだ。衣料において障害や高齢者に特化して長年研究されてきた人。一般的な洋服の規格から外れる人たちが“望んでいるが黙って諦めていたおしゃれ”に道を切り拓いてくれた。UDから一番遠いところにある状態で、実践的な近道は“お直し”かもしれない。

5年ほど前に逢った時、岩波さんが「(洋服のお直し)マジックミシンの中のいくつかの店舗で、一般的な直し以上のもの、障害のある人のニーズにも応えてくださることになったのよ」と嬉しそうに話してくれた。そして、今年に入り、会社を挙げて、さらに顧客のニーズに応えようということになった。正直に言うと、そんな日が来るとは思っていなかったので、有難い気持ちでいっぱいだ。

障害と言っても種類のみならず程度の差もあり様々だ。障害を持っている私ですら、本当の意味では、せき損しか知らない。その中でも可動域に個人差がある。取り組む店舗によっては、それも腰が引ける課題だろう。また、やる気の面でも温度差が違うのではないかと思う、それも当然だろう。その上で敢えて言う。

「どうか恐れずに積極的に取り組んで頂きたい。」それが私の願いだ。

長年取り組んできた岩波さんのような人からの情報提供もあるだろう。すでにその分野で先進的にやっている店舗もあるだろう。それらの情報を共有して欲しい。もちろん、他とも連携を取って、全体の底上げをしてほしい。

実際に、どの程度の直しをやってもらえるのか、は分からない。店舗によって出来ることの差もあるのだろうが、「今はここまでしかできませんよ」というものも、ノウハウの蓄積で数年後には、もっとできることが増えているかもしれない。

確実に言えることは高齢者が増えていること。その人たちは既定のパターンから外れていく、それは障害者とも共通している。また、世の中がUDの方向に進んでいて、アクセスも良くなり、外に出る高齢、障害者も増えてきた。当然、おしゃれは抜きには語れない。「うちのお直しには、そういう人は来ませんよ。だからそんなニーズはないのではないか」と思われているならば、それは違う。相手が思う以上にユーザーはお店に行くことや尋ねることへのハードルが高い。「こんなことを言っても無理かもしれない。そもそも相談に乗ってもらえないだろう」と諦めている人が多い、潜在的に望んでいても。

そこは、きめ細やかなプロの直しの腕の見せ所。着たい服がよみがえることの喜びは着る人だけではないと思う。直す側にとっても嬉しいことではないだろうか?

その分野に特化した技術が誰かの幸せに役立つこと、それがプロ。マイスターであろう。簡単に捨ててしまう物も多い今において、こだわりを持ち自分の気にいったものへと蘇り大切に使われるということ。そういう選択肢があってもいいと思う。

何を着ていても生きていけるからこそ、敢えてこだわりを持つこと、その気力が自分にある!ことが生きているという証かもしれない。

 

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一般社団法人日本車いすカーリング協会


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