4月のおしゃべり

 

 

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~車いすでお出かけ中に怪我をする、相手にさせた場合に・・・~

 

 


 

車いすで外出した際に誰かとぶつかって怪我をさせた、させられた場合の責任の所在について、いざとなったらどうなるのかしら?と昔から思っていました。幸いにも、そこまでの事態には至ったことはなかった。今回は、そのことについておしゃべりをしたいと思います。

 

今月もおしゃべりの相手は、中野佐世子さんです。

 

教育ビデオをご紹介します。

~合理的配慮と職場のコミュニケーション~ 心のバリアフリーをめざして
(株)自己啓発協会 http://www.e-head.jp/
これは、「働く障害者に必要な配慮とは?職場でお互いがいい距離感でコミュニケーションを築くには?」を考えるきっかけになるような教材です。

車いす生活になった35年前は「バリアフリー」の言葉もなく、エレベーターがある駅も少なかった。また、建物の入口はスロープが無く数段上がる場面にもよく遭遇しました。親切な人が手伝いを申し出てくださることや、こちらからお願いして快くやっていただくことも多々ありました。その時、いつも思っていたのは、階段を上げてもらうときに落とされたらどうしようという不安。また、相手が転んでけがをしたら、それは私の責任?相手の不注意?治療が必要だったら、どちらが費用を払うのだろう、などと考えていました。

これは、車いすだから、というのではなく、一般の方々の間でも起こることですね。

 

 

はい、今でも階段しかない場所ではベビーカーのお手伝いやトランクのお手伝いなどすることがありますからね。生活していれば誰にでも起こりうることだと思います。だから傷害保険も有るのでしょう。ボランティア活動に参加する場合、私たちはあらかじめボランティア保険に入ったりします。

車いすユーザーでも、都会に住んでいてしょっちゅう階段の上り下りを手伝ってもらっていると、事故に巻き込まれる確率は高くなりますね。実際に、そういうことが有りましたか?

 

 

今はUDの発展で車いすを持ち上げてもらう場面は格段に減りましたね。しかし長年、車椅子生活をしている中で、階段を下ろしてもらう際に手を離されたことが有りました。もちろん、わざとではありません。当然、車いすから床に落ちたのですが、その後、病院に行きましたが“おそらく”何でも無かったので良かったです。

 

 

おそらく?とはどういう意味ですか。検査のために行ったわけですからレントゲンは撮りましたよね?

 

 

実はそのときには撮っていません。医師に「折れていたら熱が出たり腫れたりしますよね?」と尋ねると「脊損の人は、たとえ折れていてもその症状が出ない人も多い。そして折れていても手術しないよ。それは繋がりにくいから。またそのままにしていても車いす生活だからいいのではないか」という判断があって、です。いっけん、ぞんざいで見放したように聞こえますが、脊損をよく知る医師は、たいてい同じ見解です。この時は、まあ大丈夫だろうという “判断にしました”しかし、本当に折れていて手術せずとも治療(固定するのみ)が必要な場合には、レントゲンではっきりさせますし、責任の所在についても考えざるを得ないですね。

 

 

厚意で手伝ってくださった、しかし、だからと言って落とされて怪我をしたのに黙っているわけにもいかない。・・・難しいことですね。治療費だけでなく、働けない間における遺失利益もあります。そういうことを想定しても、傷害保険に入っていたほうがいいですよね?

 

 

はい、そう思い、住宅や自動車でお世話になっている損害保険会社に相談してみました。佐世子さんは入っていらっしゃるのですか?カードに付帯しているものもあるのでは?

 

 

カードの付帯は旅行の際には有効ですが日常は別ですね。私自身は運転免許もないし、最近は自転車にも乗らないので、損害保険には加入していません。

それで、ひとみさんの相談された損害保険会社は、どのような回答でした?

 

 

はい、「自分の会社では、以前、車いすに関連した事故の保険は有ったが今は無い。ただ、ご主人の入っている日常の傷害保険を使って、ひとみさんが単独で誰かに怪我をさせてしまった場合には、相手の治療費は出ます。しかし、ひとみさんの治療費は出ません。」単独の意味は、誰かが私の車いすを押していて、別の人にぶつかってけがをさせた場合は単独ではない。車いすを自ら操作していて、別の人にぶつけて怪我をさせた場合を単独ということです。

世の中に、車いすに特化した保険も存在するのかは、さらに調べないと分かりません。

 

 

 

何となく一方通行で腑に落ちない感じがしますが。最近は高齢者も車いすで外出することは、ごく当たり前のことですね。おひとりで電動の車いすやハンドルの付いたものを乗っている様子も見かけます。

以前、愛知県の病院で職員研修をしたときに、事故の話を聞きました。病院の敷地内でハンドル付きの電動車いす(オートバイのような形)が他の患者にぶつかる事故が数件起きたとのことでした。両者とも高齢者なので、事故を回避することが難しかったようです。

 

 

そうです。ハンドル付き電動車椅子の人が道路で横倒しになっている話を聞きました。一応、時速4キロとか、歩くスピード以内なので、歩道を通ることになっています。また、自分で操作が安全に行えるのかのテストも有ります。それでも事故はあるようです。高齢者の電動車いすは、例えばスズキならば、購入時に保険が付帯しているようです。個人で入る保険会社以外に、私も購入したところや福祉事務所にも尋ねてみようと思います。

 

 

分かったらぜひここで又お話を聞かせてください。

ところで、手動の車いすと電動とでは、そのリスクに違いがありますか?

 

 

はい、私は両方のタイプを使っています。手動の車椅子で相手に怪我させたことは有りません。落とされたり、自分で落っこちたことはありますが。簡易電動になってから、人のかかとに乗り上げたことと、エレベーターで後ろ向きに下りて、後ろにいた人がひっくり返った事がありました。どちらも重篤ではなく、責任問題までは発展しませんでしたが、手動より電動の方が車椅子に馬力があり、同じ事態(バックして人とぶつかる、かかとに乗り上げる)でも電動の方が衝撃は強いですね。

私の簡易電動車椅子は手動にも切り替えられるので、人の多いショッピングモールなどでは、手動で運転するようにしています。自分で気をつけられることは心がけるようにしています。

実は今年初めに、道で、全速力で曲がってきた自転車にぶつけられたことがありました。車椅子のステップから足が飛び出して跳ね、とても怖かったです。相手が難癖つけてきたので、「警察に連絡しましょう」と言うと、逃げて行きました。つまり被害者にも加害者にもなりうるのです。

 

 

えぇっ、そんなことがあったのですか?

私も以前、駅前の歩道を歩いていた時、爆発音がしたので立ち止まってその方向を見た瞬間、自転車にぶつかられ跳ね飛ばされたことがあります。よそ見をした私も悪いのですが、気遣うどころか「ボケっとしてんじゃねえよ!」と相手に怒鳴られました。それでカチンときて、「ここは歩道です。交番に行きましょう。」と言い返したら、走り去りました。「歩道通行可」の標識がない歩道を、中年男性が走行することは許されていませんから。(※)

見えていても、聞こえていても、事故に巻き込まれる機会はどこにでも転がっていますね。

話を戻しますが、ひとみさん自身が加害者になってしまう危険も潜んでいるということですね。

社会の中には本当にいろいろな人が居るから、私自身が加害者にも被害者にもならないよう、常に周囲に注意を払っていたいと思います。

 

※自転車は、歩道と車道の区別がある道路では、車道を走行するのが原則です。

<道路交通法第17条>
 普通自転車が歩道を通行できるのは下記の場合です。<道路交通法第63条>

(1)歩道に 「普通自転車歩道通行可」 の標識等があるとき。
(2)13歳未満の子どもや70歳以上の高齢者、体の不自由な人が普通自転車を運転しているとき。
(3)普通自転車の通行の安全を確保するため、やむを得ないと認められるとき。

 

 

35年前に比べれば、EVやエスカレーターが敷設され、ハード面はものすごく整ってきています。それでもすべてが完備しているわけではありません。そのような場合に、「階段しかなくても人の思いやりで、みんなで車いすを上げれば解決するよ」と言う人もいますが、性善説でやることは、いかがなものかと思います。駅に階段しかなく駅員さんがやってくださる分には、それは仕事なので、何かが起こっても保障が有るのだろうと想像します。これはOKです。また、有事に人の善意に頼ることも有り(致し方ない)だとおもいます。

しかし平常時には、できるだけ避けていた方が良いと思います。それで行ける場面が減ったとしても、危険を回避する、また相手を巻き込まないほうがいいと思いますね。

 

 

体が不自由であっても、高齢者が単独で外に出かけていける世の中になってきました。さらなる機器の開発により便利な乗り物が増えることは、高齢者、障害者にとっても朗報です。しかしそれに伴って、当然、トラブルの件数は増えます。良いことばかりではなく、良くない事態に遭遇することの準備もした方がいいということですね。さらに、情報を収集したいと思います。新しい機器や便利でお役立ち機器も併せてお伝えできれば、と考えております。

落ち着かない日々が続いております。皆様のご健康を願って、名実ともに春を迎えたいものです。

お元気にお過ごしください。