おしゃべり

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  2020年8月のおしゃべり「多機能トイレ」

ひと昔前までは車いすで使えるトイレの数が少なかった。また、一般の公共トイレは「いつも汚れていて怖い」と、まず使おうという発想にならなかった時代がありました。

その頃より、現在は格段に改善され、今や強い味方です。

 

今月もおしゃべりの相手は、中野佐世子さんです。

佐世子さんは、「マスク着用率上昇の中、聴覚障害者の苦労 や 手話通訳とマスクの問題」を

タイトルにラジオでも話されています。NHKラジオ<Nらじ>(4/28放送分)ご視聴ください。

 

教育ビデオをご紹介します。

~合理的配慮と職場のコミュニケーション~ 心のバリアフリーをめざして
(株)自己啓発協会 http://www.e-head.jp/
これは、「働く障害者に必要な配慮とは?職場でお互いがいい距離感でコミュニケーションを築くには?」を考えるきっかけになるような教材です。

昔は車いすトイレと呼ばれていました。車いすユーザーのみが使用する目的であったものが、今や多機能トイレとして、多目的トイレ、誰でもトイレと表記されて、様々なニーズに応えられるものに進化しています。佐世子さんは利用されたことは有りますか?

 

 

中を見たことは有りますが、自分では使用していません。最近はコンビニにも多機能トイレが有りますね。以前、ひとみさんに撮影をお願いしたときに、現場の近くのコンビニに多機能トイレが設置されていて本当に助かりました。コンビニはクローズの時間が有りませんからいつでも使えます。すべてのコンビニで多機能トイレが標準になるといいですね。

 

 

そうなると本当に助かります。更にこの20年、車いすで使用できるトイレが増えてきました。それは単に行動範囲が拡がるのみならず、自信を持つという精神面での効果にまで影響する、というのは言い過ぎではありません。これは当事者ですら驚くほどの人生の改革です。

 

 

なるほど。私達はトイレの心配などせずに外出しています。それが当たり前だと思っていました。でも、もし、行った先にトイレが無いかもしれないという不安があったら、外で仕事に集中することなどできませんし、余暇を楽しむ余裕もありません。

ひとみさんと出かけることの多い私ですが、トイレの問題がどれだけ当事者の心に大きく占めるものかは、その本人にしか分かりません。ことあるごとに私たちに伝えて戴きたいことの1つです。

 

 

トイレの心配があって家に居がちな障害者というのは今でも普通にいます。不安は気持ちを萎縮します。しかも人に話すには憚られることでした。私の場合はね。プライベートな事だからという意味では有りません。それは、言われた相手がどうすることも出来ないことだからです。言われた相手が困る話はしたくありません。今は、特に東京は使えるトイレが数多くなりましたので、逆に堂々と言えようになりました。救いの有る問題は相手に言えるのよね。

 

 

1994年のハートビル法で大きく変ったのではないですか。新宿の高島屋は「ハートビル法」の東京都認定第一号建築物だったと聞いています。あの頃に、ほぼ各階で多機能トイレが設置されていたことや廊下の幅の広さも画期的でした。喫茶店に入らずとも、無料で休める椅子もあちこちに置かれていましたね。四半世紀たった今は、それが当たり前になっています。

 

 

 

その頃から商業施設のみならず、公共トイレもどんどんリニューアルされていきました。それまでは、車いすトイレと称して、公園などでは、一般のトイレとは別にポツンと在って、それが治安によくないために鍵がかかっていました。使い時に使えないトイレでした。わざわざ管理人室へ鍵を借りに行かないといけない。でも鍵がかかっていないのも怖い。いずれにしても使えない存在でした。

 

 

多機能トイレになると、車いすユーザーのみならず色々な方々が利用することになり、目が行き届いて、防犯にも役だっていますね。

 

 

2000年には交通バリアフリー法が施行されて、交通機関、駅や列車内にも多機能トイレの設置が進んできました。同時に怖い、汚いということも解消されていきましたね。

 

 

そうですね。私が使用する駅のトイレも同様です。以前は駅のトイレを使うことは緊急時にしか考えられませんでした。でも今は本当にきれいになって、安心して使えるようになりました。

ひとみさんは地方講演に出かける機会も多くありますが、新幹線はどうですか? 例えば東海道新幹線は16両編成の中に多機能トイレが1つしか有りませんよね。

乗車ドアも11号車以外は狭いとか、いろいろな問題があるようです。

車内の移動も狭くて大変だと伺っていますから、今後もっともっと増設されて利用しやすくなるといいですね。

 

 

新幹線内の広くてすべて(車いすのみならず、多機能なもの)を付けているトイレとは別に、もう少しコンパクトでもいいから、ちょっとだけ広い扉のものであったら号車の選択の幅が広がります。

今は、立派な広い多機能トイレが1つとそれ以外の2種類のみです。つまり、11号車近くしか席を取れないということになります。一般の人でも、少し広めの扉を利用するのは不便ではないと思うのですが。数は必要でしょうから、中の広さは我慢して扉の幅だけでも広めになれば、かなりの数の車いすユーザーが入れます。重度な人、介助が必要な人に従来の大きなトイレを譲って上げることもできるし、そこだけに集中しませんので。

 

 

2006年のバリアフリー新法では、オフィスビルも対象に入って、より使いやすいトイレの数が増えました。また、車いすや赤ちゃんへの対応のみならず、いろいろな人のニーズに応えるべく変化されていきましたね。

 

 

はい、多機能トイレで言えば、車いすで使いやすい設備のみならず、赤ちゃんのおむつ換えのベッドや大人のベッド(ユニバーサルシート)、歩ける人達が使う、洋服を着替えるためのボード。オスメイト対応などがあります。昔は車いすの人を想定していた単機能でしたが、あらゆる人が使う多機能になってきました。ところが、そのことが逆に、いつも誰かが使用しているということになりがちなのです。便利で多くの人が使えるようになったが、その割に数が少ないので、追いついていないということですね。

 

 

その問題を解決すべく、一番先端のトイレは、男性、女性のトイレ内に、その多機能トイレにあったものを分散して入れるというところが出てきました。赤ちゃんのおむつ換えのベッドや大人の介助ができるベッド。オスメイトが配置されているなど。それらは男女別の中で、さらに個室として設置されています。ファミリートイレと呼んでいるケースもあります。

 

 

そうすると異性間の介助がしにくいですね。例えば、介助する息子さんと介助されるお母様。どちらにも入れるようで入れない。どちらかが我慢して使うという事態が起きます。その問題を解決するために、男女別とは別の共有ゾーンを設けました。つまり男女と共有の3種類です。共有には多機能トイレの他に、男女別のない個室トイレ、キッズトイレやおむつ交換室など、です。

 

 

多様性が認められ、当事者たちが少しずつ声をあげられるようになり、トランスジェンダーへも配慮されるようになったのですね。また、乳幼児連れの人が使用する場合のファミリートイレが共有スペースにも、男女別にもダブって有る、ということもよく考えられていると思います。

 

 

はい、ただ、一番望ましいのはすべてが個室でしょうが、そうすると男性トイレは小便器が少なくなり使用時間が長くなり混雑する、つまり待ち時間が長くなるようです。

まだこのような大規模であらゆる人のニーズに応えられるトイレの数は少なく、高速道路の大きなサービスエリアには有りますので、じっくり入り口の案内図をご覧ください。佐世子さんもおっしゃっていますが、この入り口のトイレマップを見ても直ぐに理解できない、ホントじっくり見ないとわからない。(笑)車いすユーザー目線で言いますと、女子トイレ内のオスメイト付きのトイレは、車いすでも入れる広さがあるのに扉が狭いところもあり。惜しい!あとちょっとで入れるのに残念!と思ってしまいます。一般トイレもあと、5㎝扉が広ければ、かなりの車いすユーザーが使用できます。多機能トイレの数が少なく、使用できない時もけっこうあります。車いすユーザーは「ココ」しか使えないというのではなく、混んでいる時には、他でも対応出来るトイレがある!という風に、使える選択肢が増えたら嬉しいなどと思います。

それでも、多くの当事者の声が反映されてきていると感じます。とても有り難いです。海外から日本に戻ってきて、いつもホッとするのは、日本のトイレが世界の中で、設備の良さや清潔さでは、一番だからです。

 

 

 

使う側の私達が、綺麗に丁寧に使うということも心がけたいですね。公共のトイレだからとぞんざいに扱ってはいけないということ。掃除してくれる人がいるから気持ち良く使えるのです。そして当事者が言いにくいプライベートな問題、排泄についても声を上げる勇気と、それを受け止めてくれる側の工夫にも期待したいですね。