9月のおしゃべり

9月おしゃべり

 

 

「車いすとスロープ」

~完璧を目指すより、出来ることから~

 


 

車いす用のスロープをネットで探すと種類が豊富で何を選ぶべきか難しい。材質も色々、値段に3倍くらいの開きがあります。実際に試してみないと分からない面も有り、使ってみるまでドキドキです。昨年、自分でも一つ買いました。今回はいくつかの物をご紹介をします。

今月もおしゃべりの相手は、中野佐世子さんです。

 

教育ビデオをご紹介します。

~合理的配慮と職場のコミュニケーション~ 心のバリアフリーをめざして
(株)自己啓発協会 http://www.e-head.jp/
これは、「働く障害者に必要な配慮とは?職場でお互いがいい距離感でコミュニケーションを築くには?」を考えるきっかけになるような教材です。

よく目にするのは駅です。電車とホームの間を架けるスロープは、写真のタイプ(下記)が多い。新幹線は、より短く軽いものを使用しています。これは段差と隙間の大きさの差によってタイプが違います。最近は女性の駅員さんが増え、軽々と持っているように見えますが、持たせてもらったら、けっこうな重さがあります。7キロほど有ります。電車の場合は軽い車椅子10キロから100キロを越える重量の車椅子まであり、それプラス本人の体重に耐えられるスロープということでしょう。

電車

 

 

どこで誰に使うかによって、材質選びから始まり、長さ、幅の選定をするということですね。電車と同様、公共性の高いバスに乗車する車いすユーザーも多いと思いますが、バスにはどのような仕様があるのですか?

 

 

代表的なのは、電車と同じで、重くてしっかりした3面を折りたためるものと、床からスライドして出てくるタイプです。

バス1

バス2

 

なるほど。重度で電動車椅子を使っている人や海外からいらっしゃる体の大きい人など、不特定のユーザーのためには丈夫でなければなりませんものね。

ちなみに車椅子はどのようなタイプが代表的ですか。

 

 

はい、実はものすごく沢山の種類がありますが、一般的に目にするものをご紹介します。

車いすあれこれ

 

 

ひとみさんの使用しているのは<自力で漕ぐタイプ>と<電動28キロタイプ>のものですね。遠くへ出かける時や上り坂の多い場所、暑い日などには<電動28キロタイプ>を使用になっていらっしゃいますが、ご自分の好みで選ぶだけではなく、障害の程度によって決まってくるということもありますか? 例えば、体幹の保持ができない人や、首を支えないといけない人の場合、背もたれが高いものを選ぶとか。自力で漕げる人や電動でないと動けない人もいらっしゃいますものね。

 

 

はい、首まで支える必要のある人の場合、漕ぐ力が無い場合も多く、手動よりも電動車椅子となります。最近多く出ている簡易電動車椅子(電動自転車と似たイメージです。)は、28キロと電動にしては軽いのですが、バッテリーが小さい分、力も弱い。低い段差(7㎝ほど)までしか乗り越えられません。手動、電動の切り替えがあり、折りたたみも出来ます。重度な車椅子ユーザーは、もっと馬力のある電動車椅子に乗ります。重量が100キロ有ります。

 

 

公共交通機関で使うスロープはどのようなタイプの人でも対応するために、かなり丈夫なものが必要ということは分かりました。しかし、私達が気軽に持ち運べるタイプもあるといいですね。その場合は、車いすユーザーの体重+押す人の体重+プラスアルファの重さに耐えられるものでいいわけですものね。出来るだけ軽くて折りたためる物がいいですね。

 

そう思い、長さを伸ばせて、レールが2本のタイプを買いました。2本に分かれる分、無駄な面が無いので軽いかな、と。半分の長さの物がスルスルと倍に引き伸ばせます。

みなちゃんとスロープ1         スロープ2本編

 

 

この夏、3段あるレストランの入り口で、そのスロープをセットして一緒に入りましたね。スロープのレールに車椅子を乗せてM嬢が押すと、同時にスロープが動いてしまいました。この時には私がスロープを踏んで押さえていましたが、動かないように押さえる人も必要ということですね。これは2本レールの欠点だと思います。ひとみさんにお話は伺っていましたが、自分でセットしてみて初めて理解できました。また、車椅子のタイヤの幅に合わせてセットするという「ひと手間」もあり、慣れない私には丁寧な説明が必要でした。

 

 

そう、ちょっとしたこと、と思うかもしれませんが、簡単にできるということが、実は大事で長続きする要件ね。雨の日の場合もあり、サッサと出来る方がいい。

 

 

 

最近、嬉しいことがありましたね。私達がよく行く原宿の美容室gemでスロープを買ってくださいました。(写真)お店の入り口に階段が2段あるのと、店内にも段差があるためです。

IMG_1704

 もちろん、スタッフはいつも笑顔で車いすを持ち上げてくれていましたが、やはりスロープがあると気持ちが楽になりますか?

また、ドア幅やエレベーターの奥行きも限られている中で、スロープはどの様に選んだのでしょうか? 実際に使ってみていかがでしたか。

 

 

車いすユーザーである私の意見を何度も確認して下さり、上記のスロープを選びました。佐世子さんもアドバイスしてくださったようで有り難う!2本のレールではなく1面になるタイプで良かったな、と思いました。300キロの重さまでが耐えられるそうです。長さが150センチに伸びます。これはアルミながら、けっこう重いです、長くて一面ですから。よく電車で使っているタイプはアルミではなく、gemより短い1メートルほどですが、重さは、だいたい同じで7~8キロ。

重さを気にしなければ長いほど、スロープは緩やかにはなりますが、道の真ん中まで伸びると通行の妨げ!になります。

このスロープ、縦に伸びて、横は半分に折りたためます。つまり4分の一の面で収納ということね。

IMG_1706                   IMG_1707

 

 

毎回、上の写真のようにセットして下さるのですね。スロープを出したり折りたたんだりするという手間をかけてしまうことはありますが、このスロープが有るのと無いのとでは、気持ちも体の負担も違うでしょう?

 

 

違いますね。以前は、必ず軽い約10キロの車いすで行っていました。2段ある段差を上がるのも始めの頃は2人がかりで。そのうちにお一人で上げられるようになりました。私が後ろ向きになって、ウイリー※した状態で後輪だけで引っ張り上げます。しばらくして前向きでウイリーしながら後輪だけで段を上がるという方法に変わりました。階段を下りるのは後ろ向きで、ドンドンと下りて行くだけなのですが、一段一段下りる際、床に響くのと同時に、実は車いすユーザーにも衝撃が来るのです。ただ私も遠慮があって、こちらから「響かせないでね」とは言いにくいものです。

すぐに察してくださり、響かせないように膝を入れてと、ご自分で工夫をされていたのです。これには感激しましたね。全く車いすのことを知らない方が、回を重ねるごとに、どうすれば響かないかを真剣に考えてしてくださっていたのですよ。相手に思いを寄せてくださる気持ちが、とても嬉しかったです。

※ウイリーとは、前輪を上げて、後輪だけで走行すること。

 

 

思いやりと同時に理解力の高さもありますね。

お店としてスロープを購入して下さったおかげで、手動車いすで行くか、簡易電動の車いすにするか、その日の天気や体調と相談をして、自分で移動手段を選べるようになったということですね。とても喜ばしいことです。

 

 

はい、これで雨の日も傘を差して行けますし、原宿の長い上り坂も気にせずに帰れます。

車を運転して軽い車いすを積んで行くのと、電動車いすで電車で行くという2つの方法の選択ができるようになりました。

 

 

都内は駐車場が混んでいますし、車いす用のスペースがあるところもまだ少ないですものね。機械式の駐車場では凹凸があって、車いすを下ろせないですからね。「路上の白枠が空くのを待つしか無かった」と言っていらしたから、選択肢が増えたことは本当に良かったです。

 

 

気持ちが楽になりました。行くことに躊躇しないというか、行くためのハードルが下がりました。スロープを買ってくださったからと言ってバリアフリーが完璧になったわけではありません。車いすトイレがあるわけでも無い。近くの区の施設のトイレを使用します。でもね、それはユーザー側も工夫して準備します。階段が解消されるなら、あとのことは何とかなりますから。それを言うならば、はじめから大型ビル内のバリアフリーのお店に行けばいいのです。

 

髪を切るだけなら、いくらでもお店は有ります。もっと言えば、髪を整えなくても生きていけます。でも、このお店に行きたい、この人に切ってもらいたい、という欲望。美容室に限らずあらゆること、ものに関して、「私は自分の意志で選択すること」が叶えられた喜びは、何物にも代えがたいものです。いつも、ちょっとずつ我慢するとか、いつも諦めていると、知らず知らずのうちに、心に澱がどんよりと溜まっていくものよ。当たり前に手に入る健常者には、ちょっと理解できないかもしれないわね。当たり前に手に入らないものが叶えられるのも、また喜び、ひとしお!かもね。

 

 

温かさに触れる喜びを知るということかしら。

周囲の方たちといい関係を作りながら、理解者を増やし、暮らしやすい社会を創っていくという素晴らしい例になりましたね。車いすユーザー、いえ、すべての人が普通に自分で選択できるユニバーサルデザイン社会を 目ざして、これからも楽しく頑張りましょう。

 


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